Trainer×Governmentで得られる3つの変化

医療費問題の根本的な改善

平成22年度の国民医療費は37兆4202億円です。前年度の36兆67億円と比較すると、1兆4135円の増加となっていますが、それよりも、以下引用の近年の医療費推移グラフを見れば、何十年もの間、増加の一途を辿っているのは明らかです。(厚生労働省HPの国民医療費の概況より)

国民医療費の年次推移

平成12年度では前年度比で、5000億円を越える減額となり、その後数年、伸びが緩やかになっているように思われますが、その背景には、同年4月から施工された介護保険制度(詳しくは後述)に伴って、それまで国民医療費の対象となっていた費用の一部が、介護保険費用へと移行した影響が大きいと考えられます。

また下記引用のグラフは年齢別の国民医療費の推移を表したものです。

階級別国民医療費の伸び

グラフにおける上位3つが65歳以上の線であり、特に激しい増加傾向にあることが分かります。
税と社会保障の一体改革には、医療と介護サービスの提供体制の効率化・重点化と機能強化と、医療、介護保険制度の改革案が盛り込まれており、医療費の公費負担は一段と増加する見通しです。しかしこのまま医療費や次に述べる介護保険制度に投入される公費が増えれば、いかなる増税措置を行っても、歳出を賄えず、財政赤字拡大の方向へ向かうのは確実でしょう。

医療費問題の根本的な改善

介護保険制度とは介護が必要となった高齢者やその御家族を社会全体で支えていく仕組みです。介護認定を受けた人は、1割負担で介護サービスを受ける事ができ、残り9割は税金と、40歳以上が強制的に徴収されている保険料で賄われています。詳しくは厚生労働省のHPから引用しました下図『介護保険制度の仕組み』をご覧下さい。

介護保険制度の仕組み

以上のような仕組みで行われていますが、こちらも医療費と同様に公費が使われていますし、40歳以上の人達から保険料として徴収したものを財源として使用しています。
そして以下2つのグラフから、増え続ける要介護者と、膨らみ続ける介護保険制度の財政状況が見て取れます。

要介護度別認定者数の推移
要介護度別認定者数の推移

以上の統計から、医療費と介護保険制度の総額は年々増えており、その財政を健全化するために私達国民の税負担や保険料負担も大きくなっている事が伺えます。

医療介護福祉は充実していなければなりません。しかし安易に裾野を広げるとどうなるでしょうか? 安いからといって不必要な薬まで習慣的に処方されたり、まだ介護など必要ないのに「受けないと損だ」と考えたりする人が少なからずいるのは事実です。また税負担が若い世代の生活を圧迫する結果にもなっています。若者の人口自体が少ないことに加え、政治への関心も低い事から、税の年代別再配分が高齢者側に偏っている現実は確かに存在しているのです。

今いる高齢者の数を減らす事も、これから増える高齢者の数を減らす事も出来ません。しかし健康な高齢者を増やす事は出来ます。医療や介護が必要のないよう、元気に歳を重ねることは出来るのです。

医療費と介護保険費用が伸び続ける未来を望むのか? またその未来を次世代に残すのか?
医療や介護など必要としないアクティブシニアが増える未来を望むのか? そして残すのか?
これは国民一人一人が考えなければならない事です。生命と幸福感に直結する人生哲学と言っても過言ではありません。
その問題提起をするだけでも十分に価値のあることだと思っております。

私達トレーナーは、健康を維持し、出来る限り医療に頼らない人生を送るための「運動」「栄養」「休養」についての、知識や手段を提供できるだけです。
そうなろうと望み、努力するのはやはり、みなさん個人個人なのです。どういう未来を望むか?を考え、想いが強くなった人ほど、その未来を実現するための努力を、惜しまずに出来ると思います。

一方でトレーナーは、高齢者に対する予防医学への取り組みを推進する場合も、中年以下の世代へ生活習慣病の予防など、個々にあったプログラムを提供する場合も、自分で努力してもらえるよう、出来るだけ楽しく身体を動かし、楽しく学ぶ機会を提供する、ということを常に心に留めておかなければなりません。

現状、トレーナーには民間やアメリカの資格があるだけで、国家資格はありません。またそのような資格を取り、ある程度の技術や知識を持っていても、これまで運動に興味がなかった人や苦手な人に対して、楽しく運動が出来るようアプローチする、といった発想の豊かさや人間性が備わっている訳ではありません。そういったリーダーシップを持ち、技術や知識のムラを少なくするために、トレーナーの国家資格制度が必要だと考えております。

自他共栄の種

人の営みの基盤には心身の健康は欠かせません。例えば風邪をひいている時や、酷く腰が痛い時には、なかなか人助けをしようという気持ちにはなれません。逆に自分自身が健康で、仕事も遊びも充実していれば、他人を思いやったり、国の将来を考える余裕が生まれるものです。

国をあげて「みんなで元気になりましょう」と呼びかけ、医療費や介護保険費で圧迫される財政を健全化するよう働きかければ、自分自身の健康への留意の先に、国のあり方に対する意識の芽生えがあるでしょう。そしてその時、国民の多くが心身ともに健康な状態であれば、他人を思いやり、国の将来を考えられる方向に、政治も向かっていくと確信しております(この流れからTrainer×Communityの必要性を感じました)。